元気なオタク

YESハッピーりぼおんオタク

未来編

 人生に虚無が訪れることがあるとすれば、8月15日がまさにそうだろう。本当ならお気に入りのシャツを着てスキップしながら劇場に向かうはずだった8月15日。家庭教師ヒットマンREBORN! the STAGEの大団円を現場で見届けるはずだった8月15日。観劇人生はじめての大千穐楽のチケットを、よりにもよってリボステで、よりにもよって最終章で獲得できたと喜んでいた数ヶ月前の私、世の中はきょむです。おげんきですか。

 そんなこんなで前編は無事劇場、後編はおうちでリボステとなった最終章。終わってみると、やっぱり後編が東京公演の再配信だったからか「最終章、終わっちったな〰」という感じでも「リボステ、終わっちったな〰」という感じでもなく、「新作発表なかったな〰」くらいの気持ちでいるのが不思議。リボステが無い世界に突入したという実感なんか微塵もなければ、次々世に放たれるキャストさんからの今までありがとうございましたコメントを見ては、なんで終わる気満々なんだろう……と思ったりする始末。

 

 思えばリボーンだけはぜってぇ舞台化するんじゃねぇ……という呪詛の塊からはじまったリボステライフ。待望の舞台化!😄という的はずれな謳い文句に当時は頭を抱えながらも、ニーコ姉さんが先頭走るならしゃーねえ、まあどんなもんか見せてもらおうじゃないのよとオラついた態度で初演を観に行った。正直なところ、昨今の2.5次元は全盛期より質が下がったなと勝手に評価していたため、リボーンが酷いことになろうものなら燃やしてやる……!(何を……)と思っていた。私は過激なオタクだった。しかし、見せつけられた作品に酷いなんて言葉は全くふさわしくなかった。衣装、小道具、照明、音響、キャストさんを抜いて見たってそれは紛れもなく家庭教師ヒットマンREBORN!だった。どこを見てもリボーンに対する愛と敬意があって、原作の改変部分さえヘドロオタクを唸らせる程のリスペクトが込められている。そして、そこに立つキャストさんのクオリティは言うまでもない。私は思った。関係者は全員リボーンオタクだったのか……? 

家庭教師ヒットマンREBORN! the STAGE - 元気なオタク

 事実はどうであれ、そう思ってしまうほどスターリーやキャラクターに対する解釈というのか、理解というのか、とにかく作り手がオタクじゃないとしたら余程の仕事人間か変態だろうという完成度。原作をとんでもなく読み込んで来たなというのが素人目にもよくわかり、私はあの初演一発で虜になった。そして呪詛の塊は「未来で会おうな」おばさんになった。

 ヴァリアー編が始まる頃にはリボステに一切の猜疑心もなかった。楽しみ、という気持ちしかなかったし、リボステ制作陣に任せておいてやべぇことになるわけがねぇと完全に信頼しきっていた。実際、ヴァリアー編は私の中で伝説となった。穴が空くほど原作を読んで、セリフを空で言えるほどアニメを見てきたのに、まだまだ自分が知らないリボーンの世界があるんだと。あの発見と感動は舞台だからこそ生まれたんだと今でも思う。リボステはただの舞台化ではなく、オタクにリボーンの新しい面白さを教えてくれる存在になった。

 正直なところ、リボーンの舞台化で一番嬉しかったことは、オタクでもなんでもない普通の真面目な大人が一所懸命家庭教師ヒットマンREBORN!について考えて、話をして、仕事をしている、リボステがその成果だという事実だったかもしれない。十余年間絶え間なくリボーンについて考えているような人間ではなくて、もっと社会のこととか、仕事のこととか、ご飯のこととか、そういう生産的なことを考えてきた普通の人の口から「リボーンっていいですね」という言葉をたくさん、たっっっっっくさん聞けたことが都度本当に嬉しくて、幸せだった。もちろん他にも山程あるけど、キャストさんが、スタッフさんが、いつもリボーンを褒めてくださるのが一番嬉しかった。シリーズを重ねてファミリーが増えていく度、その輪が広がっていくようでオタクは嬉しかった。

 

 リボステが未来編で最終章だと発表されたとき、大好きなリボステが無い世界にいくんだ……と一時暗い気持ちになった。なんせ私の活発SNSオタク人生はリボステと共に始まったし、リボステの興奮冷めやらぬまま立ち上げたツイッターのリボーンオタクアカウントから沢山の同志の存在を知ることができたからだ。リボステは親と言っても差し支えない。だからリボステが終わってしまったら何を糧にハッピーオタクライフ……? 鬱だ。でも同時にほっとした。わけわからんやろ。

 私は家庭教師ヒットマンREBORN!が大好き。何より望んでるのは天地がひっくり返ってもアニメだ。だから舞台版が未来編で最終章とはっきり言い切ってくれたおかげで「アニメより先に継承するのでは……」とザワザワしなくて済んだ。ひどいと思われても構わん。いくらリボステといえど、やっぱりアニメでお世話になった声優さんたちより先に名セリフの数々を口にされるのは堪えられないと思った。だからありがとうと思った。どんな理由で未来編を最終章に位置付けたのかはわからないけど、とにかく個人的な理由として、リボステを最後まで愛せるのが嬉しかった。

 2021年8月18日、実際にリボステの存在しない世界にいる。未知のウイルスが蔓延してくれたおかげで最終章は突然終わり、8月15日は虚無になった。もしかしたら幻騎士が白蘭様に救われた世界線はここかもしれん。だとしたらいつか10年前のどなたか存じませぬ方々のおかげで平和な日常に帰れるかもしれん。そう思いたい。リボステ、今まで死ぬほどお世話になりました。卒論で吐きそうなとき、助けてくれてありがとう。例のヤツが蔓延ってやばいとき、配信で生きがいをくれてありがとう。リボーンを令和まで現役でいさせてくれてありがとう。「リボーンは愛されてるね」ってオタクを肯定してくれてありがとう。リボーンを愛してくれてありがとう。リボステを作ってくださった関係者の方々には一人ひとり面と向かってくどくど感謝を述べたいよ。ほんとだよ。

リボステ、ありがとう。 - 元気なオタク

 なのに、キャストさんに「ごめんね」と言わせて終わるのが納得いかないんですよ。呪詛の塊を信者に変えるようなすごい作品を作ってもらったのに、ありがとうとありがとうで終われないなんてあんまりじゃないか。自分がはじめての大楽を見られなかったこととか後編を生で観られなかったこととかそんなことはどうでもいい。最終章が突然終わってしまったこと、リボステに今までのありがとうを伝えられなかったこと、残念にも程があるけど仕方がないと思う。今このタイミングで挑むっていうことは、こういう結末を迎える可能性も最初から十分あったことだから。3年間これだけいい思いをさせてくださったリボステファミリーを悔し涙で終わらせるのがつらい。勘弁してほしい。再演の要望は出した。どれだけも力にはならないかもしれないけど。こんな形で終わってほしくない。

 大リボステ、このまま終わるな。いくらなんでもこんな終わり方悲しすぎる。家庭教師ヒットマンREBORN!のオタクは10年単位で待てるし幻覚を見るのも得意だから、だから絶対再戦しよう。未来編の名にふさわしく、未来で再戦しよう。本当の未来編をやろう。次こそありがとうで終わらせてくれ。立ち止まるなリボステ。未来でまた会おう。

 

 

七日